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劇場版『きのう何たべた?』

劇場版『きのう何たべた?」

あらすじ

弁護士の筧史朗(シロ)と美容師の矢吹賢二(ケンジ)は互いを思い、相手が先に死ぬ事を何より恐れるごく普通のカップルだが、彼らは男であるという事は何年が過ぎても……両親にはまだ受け入れる事が出来ない。

彼らが両親に、社会に自然に溶け込むようになるには時間がかかるが、その時間はある意味、手間をかけて作る料理にも似ている。


その彼らが賢二の誕生日プレゼントとして「京都旅行」に行くに事になるが……。

セリフ

分かんないけどさ でも誰かの 嬉しい 事ってのは やっぱ嬉しいじゃない

 

 お前が死ぬかもしれないって思ったらめちゃくちゃ怖かったよ

 

お前死んだりしないよな

 

死ぬなんて…簡単に言っちゃいけないんだよ

 

その人、ずっとあんたのそばにいてくれる?…

 

きれいだなって隣りにいる人に言えるの…いいな。うん。 

 

観想

予告編を観て京都で撮影されたと思ったら、京都は旅行先との事で、映画を観てて、ここまで濃くて楽しいオープニングは初めて。

 

原作を全く知らなかった訳で、子供と一緒に観ようとしたのが、「まだ早い……?」という事もあって、京都がたくさん出るわけでもなく、結局一人で観るようになったけど、むしろ一緒に観た方がよかったと思わせる映画だった。

 

南禅寺の山門の前で「俺、もう死んでもいい」と言い出したケンジ……あまりの幸せで死ぬのか別れのひと時なのかが不安になるケンジの妄想が走る竹林の夜は音楽も加えてかなり笑える。

京都編は短いものの充実していて、美しい京都と食の京都がよく混じっている。
二人が同時に一緒に住むなら誰かは料理をしないといけないし、誰かは洗濯や掃除もしなければいけない……それを男同士で どうやって分けるのかと思ったら、見事に分けているの事に驚く。
 
両親から正月にケンジを連れて来ないで欲しいと言われたソロは正月に実家に行かず、ケンジと一緒に過ごす事にして、黒豆に挑戦する。
 
「黒豆ってこんなに手間がかかるんだ 。おせちってやっぱり手間がかかるんだね」
 
あの二人の関係が周りの人から普通と受け入れるのは ……まるで黒豆が 黒豆として出来上がるその過程と似ている気がする。
 
買ってしまえば、簡単だが、自分が作ろうとしたら思う以上、時間と手間がかかる黒豆。
 
私だけよければいいと思えば簡単だろうが、両親に、周りの人に溶け込むようになるには簡単ではない……簡単に超える壁ではないという事である。  
 
俺ね考えたんだ。シロさんとこうしてずっと二人…… すごく幸せ…… 泣きたくなるくらい幸せ ……でもね、シロさんと俺と二人だけじゃだめなんだ……だめなんだよ……俺たち二人だけで生きているわけじゃないしさ…… だから……シロさんはこれまで以上にお父さんとお母さんと仲良くしてね
 
その壁を黙々と淡々とした日常で感じながら、少しずつ超えていく彼らのステップが暖かい。
 
 今日は来てくれてありがとう 。でもね……これからは ……あなたはあなたの家族を一番大事にしてね。
 
お母さんからやっとケンジとの生活を受け入れてもらう事が出来たシロ。お母さんのその言葉は彼らの未来に灯る希望の光であろう。
 
存在すら忘れていたケンジの父の死。「ろくでもない男で、だったの顔見知りの泥棒みたいなもん」だった父の「悲しくないお葬式」も印象に残る。
 
これからは一人で死ぬのも普通。でもあなたは寂しがり屋だからこういう死に方は似合わない
 
親は子供の事をちゃんと見ている。それゆえ、普通ではない我が子のその後が心配な優しい老い母の一言が心に残る。
 
頭髪外来をめぐる誤解はむしろ彼らの絆を深める。その夜、彼らの会話は深くて心に沁みる。
 
春。
 
満開の桜の下で「きれいだなって隣りにいる人に言える」彼らの些細な幸せ……彼らを家族として繋げてくれる可愛らしい肉団子……その幸せな瞬間を祝ってくれるかのように注ぐ花びらが眩しい。
 
あーあ俺たち…年取ったなあ
年取ったねえ
 
年を取っていく彼らの未来もきっと眩しく輝くだろう。
 

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