あらすじ
漫画に心血を注ぎ、漫画家として生計を立てている泉本真治(山下智久)は、ある日、自分の作品が映画化されるという朗報を聞く。アシスタントの中村沙織(山本舞香)と喜ぶ真治。だがその喜びも束の間、突如病に倒れ、視力を失うことになってしまう。やっと軌道に乗ってきた連載漫画も休載。一緒に暮らしていた祖母(夏木マリ)の面倒も見切れなくなっていく・・・。一人になった真治は孤独と恐怖に襲われ、ベランダから身を投げ出そうと考える。そんな時、真治の漫画のファンで、耳が聞こえない相田響(新木優子)に助けられる。こうして出逢った真治と響は不思議な共同生活を始めるのだった。©2023「SHL」partners
感想
『SEE HEAR LOVE』は『私の頭の中の消しゴム』で知られるイ・ジェハン監督の映画。俳優は日本人、スタッフは韓国人、撮影は東京という韓日合作映画。
目が見えなくなった漫画家と彼が書いた漫画の大ファンである耳が聞こえない女。その二人が出会い、それぞれの障害を分かち合って生きていく姿に生きていく事の神々しさを感じさせる。
障害者は不便だけ、かわいそうではないとい話を聞いた事がありますが、ある日、いきなり視力を失ったらどうでしょう。それはさすかに不便でとどまる障害ではない…「なぜ、俺なんだ!」と叫んで叫んでも納得いくはずもない厳しすぎる現実が待っているだけ。その先をいざ!と歩んでいくためには一人での力では無理…なのではと思う。
映画の中の真治もそう。目が見えたなら、耳が聞こえたなら…そこまでいかなかったかもしれない彼らの出会い。しかし、それがあってこそ、彼らは結ばれたかもしれない。
『賢者の贈り物』のように彼の角膜移植手術の費用のため(訳あり)モデルのオーディションに参加して、モデルで成功するものの、彼に残された時間は長くない。
死を前にした彼に聞かせるために練習した「トロイメライ」が雪の降る中、街中に流れるシーンはとても切ない。
映画を通じて漫画の原作が映画化される際の条件に振り回される原作者。自分の今までの描いた世界を一瞬に変えての映画化やドラマ化はその原作を読んでいない人にはそれがすべてになる怖さも改めて感じる機会にもなる。
鎖骨までの涙なんか要らないし、「不治の病に交通事故までして死なせての涙なんて意味ないから!」と観る私だって叫びたくなる。
雪の中、倒れている彼を見付けるという設定も偶然過ぎとは思うけど、彼が死ぬ病気という事を知っていたのにも関わらず、すぐ救急車を呼ぶべきなのに自分が運ぼうとするそのシーンは絶望を与えるが、その先、その彼が生きていて、しかも彼女と結婚する事には、まさに「それでもハッピーエンドはありえる」その証明でもある。
彼の漫画で人生が変わったというタクシー運転手との出会い、リハビリに成功して歩けるようになるおばあさん、彼女との幼いの出会いを思い出ずっと彼女を追ってきた大企業の社長とその秘書、無感情過ぎの医者、悪徳すぎる編集者?など、現実離れのキャラクターは気になるところだが、ヒロインの2人が余りにも綺麗なので、ずっと見られる。
響の純粋な瞳を彼が見れないのは残念だか、きっと彼はその瞳を最初から見ていたのかもしれない。
セリフ
つらいときこそ笑うのよ。
なんで俺なんだよ。
ピアノってどんな音ですか?
すみれ…なきながら…横丁を歩く。一方…
あなたの漫画で希望もらった人がどれだけいるか知ってる?
俺はやっと自分の事か見えるようになった。
それでもハッピーエンドはありえる。
お…、か…え…り。