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毎日、映画のように🎬🍭📍🍿🌿

神様の宿る映画の世界への誘い・キネマの神様

カットとカットの間に神が宿るんだ。映画の神様が。

あらすじ

ギャンブルと酒好きなゴウ(沢田研二)は、妻・淑子(宮本信子)や家族に見放されたダメ親父。そんな彼にも、たった一つだけ愛してやまないものがあった。それは【映画】--。行きつけの名画座の館主・テラシンとゴウは、かつて映画の撮影所で働く仲間だった。若き日のゴウ(菅田将暉)たちは、時代を代表する名監督やスター俳優に囲まれながら夢を追い求め、青春を駆け抜けていた。しかしゴウとテラシンがともに食堂の娘(永野芽郁)へ恋心を抱き、運命の歯車は狂い始める…。時代を越えて繰り広げられる、愛と友情の物語。若き日のゴウが信じ続けた“映画の神様”が、時を越えて奇跡をもたらす--。(C)2021「キネマの神様」製作委員会

感想

原作は原田マハさんの『キネマの神様』で作品には作者の実体験が多く入っていると作者自身が語っている。

『キネマの神様』は元々志村けんと菅田将暉のダブル主演の予定だったが、新型コロナウイルスで志村けんさんがお亡くなり、緊急事態宣言で撮影が中断されるなど、今までの映画の中で乗り越えないといけない壁が一番多かった映画だっのではないかと思われる映画。

 

78才の父は爆打が生きがいで、ギャンブル依存症とアルコール依存症。賭博は脳の病気で簡単には治せないものらしく、年金と公園の勤労で入るお金はすねてゲームと酒。それも足りず、何回も借金を繰り返し家族を困らせていた。

そのお父さんが若い頃を知らない娘はお父さんを憎むが、お母さんは彼と共にした若き思い出が今の生活を支える力になっている。

これ以上はダメと母と娘は爆打以外父の唯一の趣味である映画を観るように勧める。幸い、映画館のオーナーは彼の元同僚であり、妻を巡って曖昧な三角関係を広げたテラシン。

 

娘と妻の本気の気持ちで攻められ、映画館に来た彼は偶々確認のために上映予定だった大昔の映画「花筏」を観る事になる。その映画で彼は助監督を務めていた。

俺が映ってるんだよ。
その瞳に。

美しくて優しい心の持ち主の女優である園子の瞳からのタイムスリップした撮影現場には若々しく、何もかもに挑戦したがる若き彼がいた。50年前の自分が。

ここからは過去と現在のミックス。

ボケ老人めが100万円の賞金を貰い、78歳の新人脚本家として自分を世間に認められ、その上のでき事は…きっと「キネマの神様」が彼に与えたプレゼント。授賞式は泣く。

幸せ・な・人ではあるが、世の中、夢も何かも失われたボケ老人めのまま、生きていく人のほうが絶対多い事を考えたら、その幸運には共感しにくいし、芥川賞を貰えたら、自殺まで至らなかっただろう太宰治も浮かぶ。

彼がその賞と取ることができなかったら…その後はどうなったのだろうか。それが、実は人生なんだから。

何の関係もない映画の主人公に訪れた幸せに素直に喜ぶことができない…落選ばかりの「ボケばばめ」は賞金100万円を手に入れた「ボケ老人め」に嫉妬していたかもしれない。

でも、彼が「ボケ老人め」のままで映画が終わるのは絶対観たくない。あの授賞式が観る者すべてを浄化させてくれるんだから…それはそれで感謝したい。

 

話しが変わるが、映画を観ながら、知らないあの時代の撮影現場が覗きできるのもこの映画の魅力。あんなに有名な女優さんが食堂であんなに気軽くスタッフやお店の人と接することは今は考えられないかもしれないけど、大昔は人情溢れるそのような関係もあったのかなとも思わせる。

映画の中での回想シーンではカメラを「キャメラ」、台本を「ホン」と言う。イイ「シャシン」にしような、いい「シャシン」作れよ。知らんけど、今は「いい映画にしようね」と言うのでは。「キャメラ」、「ホン」、「シャシン」なぜか懐かしい感じがするのも不思議。

コロナパンデミックを真正面で受けながら作られた映画であるからこそ、今を生きる人々に伝える事はもっと多いはず。それゆえ、『キネマの神様』はこの映画の完成をずっと見守ってくださったに違いない。

映画の中では音が音楽のように響くシーンが多い。不安定で、希望を待てず、いつ壊れてしまってもおかしくない彼の家を通る電車の音は不安をアップさせたり、これからの未来を和らげてくれたり、上手くバランスをとってくれる。

 

曖昧な三角関係は発車ベールの音から雨と雷、それからギターの音が続く。恋の発展を表すかのような発車ベールの音、恋の確認は激しい雷、その恋のお断りには柔らかいギターの音。

映画では人ではなく登場するすべてが意味があるかもしれない。あ、「かもしれないではなく」当たり前でしょうか。

セリフ

お前は鬼か

遠い夢

太陽に待ってもらえ!

才能というのは生まれつきのもの

俳優は素材なんだな

お前に譲るよ

私が嬉しいのはあなたがおじいちゃんを才能のある1人前の人間として認めてくれたことなの。だって、私は本気で縁を切りたいと思っていたのよ。本気でいなくなっちゃえばいいと思ってたのよ。自分の父親なのに…。

キネマの神様、私達をお守りりください

キネマの神様

キネマの神様・動画



【番外編】京都・映画神社

日本のハリウッドと呼ばれる京都太秦(うずまさ)の「大映通り商店街」には映画神社と呼ばれる神社があります。境内には『キネマの神様』に関わった方々の絵馬が多く置いてありますので、京都に行かれる際は足を運んでみてはいかがですか?

映画神社は別のブログで書いておりますので、興味のある方はリンク先をご確認ください。