あらすじ
数万人に一人という不治の病で余命が10年であることを知った二十歳の茉莉。彼女は生きることに執着しないよう、恋だけはしないと心に決めて生きていた。そんなとき、同窓会で再会したのは、かつて同級生だった和人。別々の人生を歩んでいた二人は、この出会いをきっかけに急接近することにーーもう会ってはいけないと思いながら、自らが病に侵されていることを隠して、どこにでもいる男女のように和人と楽しい時を重ねてしまう茉莉。ーー「これ以上カズくんといたら、死ぬのが怖くなる」。思い出の数が増えるたびに失われていく残された時間。二人が最後に選んだ道とは……? [Rating G] (C)2022 映画「余命10年」製作委員会
感想
あと10年じか生きられないと言われたら、あなたは何をしますか?
最後まで生きてね。
幼い子供を残して旅立つ人の残した言葉。
眩しいほど満開の桜がみんなを見守っているかのような綺麗な病室でその言葉を受け取る茉莉…でも、その彼女の命もそう長くてもないのである。
二年ぶりの家に「只今」と帰る彼女だが、それは決められた時間のための帰宅である。
久々の同窓会。何の仕事?出版系?思わず噓をついてしまう茉莉。
同窓会で渡されたたタイムキャップセルに入っていた10年後の私へのメッセージ。
同窓会のもう一人…なかなか輪に入ろうとしないカズ。その晴れない二人が同窓会で出会い…その後…お互いに大事な人となる。
「大学中退。アルバイト経験はなし。病気進行中」の茉莉に就職は越えられない壁である。しかし、小説を書くのが好きで、高校の時はコンテストで賞をもらった事もある茉莉の小説が好きだった…今は出版社で勤務している沙苗の勧めでライターの仕事を始めるようになる茉莉。
茉莉との出会いで徐々に変わるカズ。そのカズを静かに見守る玄。
良き出会いで良き道を進む彼らの物語りは長くは続かないが、見えないその後は見えるもの語りよりずっと長いのに違いない。
四月の風
満開の夜桜を通り電車の光が過ぎて、まだよそよそしい二人が「これからどうする?」と茉莉。
「仕事を見付けて家賃を払う」とカズ。
「他になにかあるでしょう?」
「他?」
「じゃあ、私も頑張るからさ、もう死にたいなと思わないでください」
その瞬間の突風は映画「ホリデイ」で印象的だった「サンタアナ風」と似ている。そして、その風は映画のエンディングを優しく飾るようになる。
cinemaholic選・泣けるシーンベスト5
シーン①
治療方法さえない病、その生きる希望を求め僅かな可能性を探る家族に対する茉莉の言葉が痛々しかった。
何もできない事を知っているからこそ、闘うことすらできない。治る可能性もない病に対して自分ができるのはその死を受け入れる事しかない。
一番しんどうのは誰だろう。一番かわいそうなのは誰だろう。どっちとも言えないかもしれない。
シーン②
シーン③
シーン④
病室で茉莉がお姉ちゃんに感謝を伝えるシーン。短いシーンだけど、黒木華さんの淡々とした涙に泣かされる。
シーン⑤
茉莉がビデオカメラで撮った動画を一つ一つ削除するシーン。死と生の境で彼女が夢見る世界…が余りにも暖かい。
ここからは涙が止まらない。もう感情を流れるままに任せて、二人の別れを見届けるしかない。
セリフ
それぞれの人生…ちゃんと生きてて…俺以外は。
次だな次。
次なんてないですよ。
愛する人に出会えるなんてキセキみたいなもんだよ。
夢が出来た。俺の人生は誰かからみたらつまらない人生かもしれないけど、隣で茉莉ちゃんがいる。
死にたいと思った俺に行きたいと思わせた茉莉ちゃんのために俺は生きる。これからは俺が茉莉ちゃんのお事を守るから…だから一緒にいてください。
私もずっと思ってた。なぜ…私?
死ぬのが怖くなるのは愛する人がいるからだ。生きられないのに行きたくなるのは愛する人がいるから。
誰もいないから、死にたくなる。生きたくないと思うようになる。自分を必要とする人がいないと思うから。ただの荷物と思うから。命なんか要らない。余計なものと思う。生きている自分がこの社会の邪魔者なんだと思う。周りから早く消えてくれと思われるように思う。
私、もっと生きたい。死にたくない。
余命10年・公式動画
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『余命10年』の原作者・小坂流加さんは本の発売3か月前の2017年2月にお亡くなりました。小坂流加さんがあの世でもお幸せでありますよう…願います。