
あらすじ
日の目を見られずにいる小説家・ワンは、母親のナンヒから「自分の友達の話を小説にしないか」と提案される。取材を兼ねて母の同窓会に同行することになったワン。だが同窓会にはナンヒと犬猿の仲であるヨンウォンも現れ、2人は大喧嘩を始めてしまう。©STUDIO DRAGON CORPORATION
人は、どこまで一人で生きていけるのだろう。
感想
二度目の視聴となった ディア・マイ・フレンズ。
それでもなお、観るたびに新しい問いを残していく、不思議なドラマでした。
作中では、認知症、病、死といった「老い」の現実が、容赦なく描かれていきます。
目を背けたくなるほど生々しい場面も多く、決して優しいだけの物語ではありません。
だからこそ、終盤に訪れるあまりにも穏やかな結末には、少し戸惑いも残りました。
現実の重さを知ってしまった後では、その結末がどこか遠く感じられてしまったのです。
それでも、この作品が強く心に残るのは、
その厳しさの中に、人と人との関係の温かさが、確かに描かれているからだと思います。
例えば、小説のための取材という形で語られていく、人々の人生。
そこに集まるのは、単なる「人生経験」という言葉では収まりきらない、重く、複雑で、それぞれに痛みを抱えた物語ばかりでした。
語られる一つひとつの話が、現実の重さをそのまま映し出しているようで、静かに胸に残ります。
印象的だったエピソード①
認知症を患うヒジャと、その周囲の人々の姿です。
ヒジャは、「自分のことは一人でできる」と、何度も自分に言い聞かせるように繰り返します。
けれどその言葉の裏には、できなくなっていく現実への恐れと、誰かに頼ることへの戸惑いが滲んでいました。
一方で彼女は、「これ以上迷惑をかけたくない」という思いから、死を選ぼうとします。
しかし、その決断すら思うようにはいかない。
その姿は、あまりにも切実で、胸に迫るものがあります。
そんなヒジャに、優しく寄り添うソンジェ、そして変わらず見守り続ける友人たち。
過剰に踏み込むこともなく、けれど決して手を離さない——その距離感が、とても印象的でした。
老いによって失われていくものがある一方で、
それでも残り続ける関係や感情があることを、このドラマは静かに描いています。
自殺すると天国にはいけない。、神様が呼んだら行け。
私たちには誰にもタイムリミットがある。
印象的だったエピソード②
子どもたちの家事を手伝いながら、ささやかにお小遣いを稼いでいたジョンア。
一見穏やかに見えていた日常の裏で、横になることが多かった長女が、実は家庭内暴力に苦しんでいたことが明らかになります。
見えなかった苦しみが、ある瞬間に現実として突きつけられる――それを知った父親は、大学教授である婿が勤める大学へ向かいます。
その行動は、怒りだけではなく、娘を守ろうとする切実な思いの表れだったように感じました。
その場面は、観る者の感情を強く揺さぶり、心に残るシーンのひとつです。
印象的だったエピソード③
主人公を演じたコ・ヒョンジョンさんが、母の病気を知ったあと、浴室で自分を責める場面は圧巻です。
どうすることもできない現実を前にしたとき、人はここまで自分を追い詰めてしまうのかと、胸が締めつけられます。
それは、決して特別な誰かの話ではなく、
いずれ、誰にでも訪れるかもしれない現実。
あのシーンは——涙、要注意です。
印象的だったエピソード④
主人公の恋人ヨンハは、本来なら、最も幸せな時間の中にいるはずでした。
しかしその瞬間、事故によって、彼の人生は一変します。
足に障がいを負ったことで、彼の人生だけでなく、ふたりの関係そのものが試されていきます。
画面に流れる、かつての幸せな時間。
けれどそれは、もう二度と戻ることのないものです。
その喪失の重さが、ヨンハを、そして彼女を、静かに押しつぶしていく——そんな日々が続いていきます。
ヨンハにとって障がいは、単なる不便さではありません。
それは、愛のかたちや、これからの選択までも問い直すものとして描かれていました。
一方、このドラマの中では、もう一人の障がいをめぐる描写が出ます。
「障がい者は不幸だ」と決めつける声。
けれど、本当にそうなのでしょうか。
作中に登場する彼は、確かに日常に不便さを抱えています。
それでも、ヨンハと違って、彼の心は満たされていて、穏やかで、どこか自由にさえ見えました。
そう考えたとき、
「不自由さ」と「不幸」は、必ずしも同じではないのかもしれません。
むしろ今の時代は、
目に見えない苦しさを抱えた人のほうが、多いのではないか——
そんなことを、静かに考えさせられました。
目に見える不自由さと、目に見えない苦しさ。
どちらが重いのかは、簡単に比べられるものではありません。
それでもこのドラマは、
「人は何によって不幸になるのか」という問いを、静かに突きつけてきます。
まとめ
確かに、この物語にはひとつの「答え」が用意されているようにも思えます。
彼女はユンハと結ばれ、彼女のフレンズも穏やかな時間を手にしていく——いわば、幸福な結末です。
けれど、そのあまりにも満たされたエンディングに、私は少しだけ違和感を覚えました。
それまで描かれてきた現実の重さや、生きることの痛みを思うと、その幸福がどこか遠く感じられてしまったのです。
それでもこの作品は、老いを根幹に、人との関係の中で揺れる感情を、決して美化することなく描きながら、それでもなお、人が誰かと生きていく意味を静かに問いかけてきます。